2013年2月13日水曜日

新しいメディア、さあどうする…30年前みんなが頭を悩ませた 〜中本正勝他編著『情報で町づくり』

図書館で地域活性に関する本を探していたらまさにぴったりのタイトルの本が見つかり、借りてきて読んでみたら80年代後半に出版された本でした。30年近く前かよ・・・。

当時の社会のIT化(そのころはマルチメディア化といった)への取り組みの実例が本書には列挙されているが、会議に会議を重ねた末、出てきた結論は商品の流通VANだとか、駐車場案内システム、CATVなどが精一杯というところだったようだ。いや、あの頃はそれでも大革命だったんだろうけど。牧歌的な時代でしたねえ。

本文中、コンピューターをどう使うかについて識者が語るコメントには、いわゆるオカミからの標語みたいな大層なフレーズは頻出するのだが、具体的に何をどうしたいというところはほとんど出てこない。新しいものにうとい一般庶民はそれを聞かされてもますますそっち方面には興味をなくすんじゃないかみたいな・・・。

マルチメディアという言葉が出てきたということは逆にいえばそれまでの社会は単一のメディアによって動かされていたわけで、情報は新聞・テレビのような大企業、権力側から一方通行に流されるものとされていた。そんな状況ではコンピューター利用についての発想の貧弱さはまあ仕方ないところでしょう。いきなりコンピューター回線でエロ画像を流そうなどと考える人もごくわずかでしょうし。

マルチメディアの新たな利用法が開発されるには。その後のインターネット隆盛などによる世の中の変化を待たなければならなかったわけです。僕が見てきた感じでは、その変化、つまり「面白い使い道」は、お役所主導というよりも、ネット上の名もなき2ちゃんねらーやユーチューブ、ツィッター、SNSのメンバーたちが作っていった印象が強い。

この本はC&C文庫の一冊、発行はNEC日本電気文化センターになっている。当時はパソコンメーカーが出版業に乗り出すほどコンピューターの分野は急成長分野だったことがうかがえる。

ちなみにC&Cとは「コンピューター&コミュニケーション」を意味する頭文字。たしかNECの社内報タイトルにも使われていたはずだ。当時僕はこの社内報づくりに関わっていたことがあったが、制作にはDTPなんかいっさい使わず、下請けの印刷会社が活字を切ったり貼ったりの原始的な方法でつくっていました。ま、パソコンで世の中が変わると大合唱してたわりに実際はそんなものでした。

情報で町づくり (C&C文庫)

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